2002年度 滋賀県公立高校入試問題 40分
( 国 語 )
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次の文章を読んで、後の1〜7の問いに答えなさい。
 空にのぼり、のぼり続けて重力がなくなるあたりまで行って振り返ると、地球はまんまるで実にきれいなものだそうである。その写真はもちろん見たことがあるが、多分そのとおりなのだろうと思う。@ウタガってみる理由などはない。けれども、そんなきれいなまるいものの上に生まれ、育ち、 A大切な会合に出席する途中で上着のボタンが取れてしまい、さてどうしたものかとまごついてみたり、B花の咲くのが前の年より三、四日ばかり遅くなったためにつぽみの前で不安になったり、そんなことをしながら老いていくのがどうもこっけいに思えてくる。
 それは実際に空のかなたから地球の美しい姿をAニクガンで見てきたからといって変わるものではない。だから、そのまるい地球の上で、取るに足らないようなことでよろこんだり悲しんだり、怒ったり、笑ったりしているのが、人間にとってはBセイジョウなのだと思うより仕方がない。
 ほとんどすべての人間がそうであろうが、《    》にいながら地球を忘れて生活している。《    》に生きていて、その上を歩いたり走ったり乗り物を利用して遠方へ行ったりしているが、また、そこで会議を開き、歌い踊ったりもしているが、その度ごとに 《    》にいることを想(おも)い出したりはしていない。地球上の人類の未来について論じ合っている人たちも、その時《    》でそんな議論をしていることを忘れているかもしれない。
 だが、また、だれもが、ある状態に置かれた時には、地球の上に生きていることをいやおうなしに想い出す。ある状態というのは半島の突端に立った時とか、【         】 とか、広野の細い一本道を歩いている時などである。
 昔、広い草原で一夜を明かしたことがあったが、歩き疲れて横になり、大地に耳をつけるかっこうでしばらくじっとしていると、地の底で、低く重い音がしているのが聞こえてきた。それは初めて聞く音であったが、人間の鼓動と同じ速度で、地の底のどこかで、火がCモエているあたりで大きな脈を打っているようだった。
 そんな音がしているはずはないと幾度も否定しながら耳を離さずにいたが、気のせいではなかった。
 それを聞いているとDタシかに不安になり、怖くなった。けれども、また、急に安らかな気持ちにもなった。その音を聞いていたかったのは私ではなく、私の生命がそれを望んでいた。
(串田 孫一(くしだ まごいち)の文章による)
−線部@〜Dのカタカナの部分を、漢字に直して書きなさい。
「空にのぼり、」で始まる冒頭文の内容は、実際の体験に基づいたものではないことがわかる。その根拠となる表現を、この一文の中から五字で抜き出して書きなさい。
−線部A・Bの内容をまとめて言い換えた表現を、本文中から十五字以内で抜き出して書きなさい。
−線部に最も近い意味を表す四字熟語に「○○哀楽」がある。○○を補うのに適当な二字を、次のア〜エの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 苦楽   イ 悲喜   ウ 喜怒   エ 苦楽
《  》には同じ表現が入る。《  》を補うのに最も適当な表現を、本文中から四字で抜き出して書きなさい。
【      】で、筆者が表現していると考えられる最も適当なものを、次のア〜エの中から一つ選び、記号で答えなさい。
まんまるで実にきれいな地球の写真を一人で見ている時
四方を遠くまで見渡せる山頂にしばらく一人で腰を下ろしている時
霧の中を走る列車の窓から、見え隠れする町の明かりを一人で見ている時
高いビル群に囲まれ、圧倒されるような思いでビルを一人で見上げている時
−線部について、「私」が、「地の底で、低く重い音がしている」 のを聞いて「安らかな気持ち」になったのはなぜか。六十字以内で説明しなさい。
 中学校へ入学してくる小学校の六年生を対象に行われる説明会で、あなたの中学校の行事の一つについて、あなたがそのよさを紹介することになった。次の注意にしたがって紹介原稿を書きなさい。
【注意】 (1) 文章の中に、紹介する行事名を入れて書くこと。
(2) 題や、「これから○○についての紹介を:…。」 などの始めと終わりのあいさつを除いて書くこと。
(3) 原稿用紙の適切な使い方にしたがい、百字以上、百四十字以内で書くこと。
次の文章を読んで、後の1〜6の問いに答えなさい。
 琵琶湖は『万葉集』に数多く歌われている。かつて天智(てんじ)天皇が湖岸に大津京を@営んだくらいだから、天智天皇の同時代人にとっても、その後の万葉歌人にとっても、《    》は重要な歌材であつた。
 天智天皇が死去したとき、皇后倭姫王(やまとひめのおおきみ)がつぎの挽歌(ばんか)を詠(よ)んでいる。

A 鯨魚(いさな)取り 近江の海を 沖放(さ)けて 漕(こ)ぎ来る船 辺(へ)付きて 漕ぎ来る船 沖つ櫂 いたくなはねそ 辺つ櫂 いたくはねそ 若草の 夫(つま)の 思ふ鳥立つ

 情景としては、琵琶湖の岸辺に夫を失った女が立って沖のほうを見ている。沖合い遠くに船が見え、こちらに漕いでくる。その船に女は胸のうちで、櫂をひどくはねないでおくれとねがう。沖のほうでも岸近くでも櫂をひどくはねないでおくれ、亡(な)き夫がいつくしんでいた水鳥たちがおどろいて飛び立ってしまうから。
 しみじみといい挽歌だと思う。と同時に、千三百余年昔の琵琶湖の風景が見えてくる歌だ。「いさなとり」は「淡海(近江)の海」や一般に「海」「浜辺」にもかかる枕詞(まくらことば)であって、直接に鯨なり魚なりを意味するものではないけれども、この長歌のなかの船はたぶんAをしている船なのだろう。船遊びとか、物を運ぶ船ではあるまい。そして、この日の琵琶湖は、波立ちのない静かな湖水であっただろう。静かであればこそ、櫂で湖面をはねないでほしいと、亡夫のためにねがっている。
 高市黒人(たけちのくろひと)は持統(じとう)・文武(もんむ)両朝にB仕えた人で、旅の歌の多い歌人である。琵琶湖を船でC渡る旅もしていたようで、こんな歌がある。

B (いそ)の崎漕ぎたみ行けば近江の海八十(やそ)の湊(みなと)に鶴(たづ)(さは)に鳴く

 琵琶湖の岸辺近くを船に乗って行くと、湖のあちらこちらにある港々に鶴(つる)がたくさん鳴いている、という情景を詠んだ歌だ。
 琵琶湖には多くの港、船着き場があったということである。そういうところに鶴 −ツルをふくめて白い大きな水鳥のD総称− が寄りあつまって鳴いていたのだ。柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)にも同様の歌がある。

C 近江の海湊は八十をいづくにか君が船泊(は)て草結びけむ

 この歌にも琵琶湖に港の多いことが歌われている。たくさんの港のうちのどの港であなたの乗った船は今晩停泊しているのであろうか、という恋の歌である。
 琵琶湖は山奥の湖ではない。人びとの暮らしと深くかかわってきた湖だ。かつて湖岸に都が営まれていたように、政治にも文化にも染まってきた湖である。人間の歴史と共にあったのが琵琶湖なのだ。もちろん歴史以前の琵琶湖(形態や位置をさまざまに変えてきた地質年代の琵琶湖)はあったけれども、琵琶湖の風景をつくってきたのは人間の歴史であり、人間の心であつた。
(高田 宏(たかだ ひろし)の文章による。)
(注) 挽歌=人の死を悲しんで作った歌。
櫂=水をかいて船を進める道具。
Cの歌=筆者は柿本人麻呂の歌としているが、作者はわからないという説もある。
−線部@〜Dの漢字の部分を、ひらがなに直して書きなさい。
《  》を補うのに最も適当なものを、次のア〜エの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 琵琶湖   イ 『万葉集』   ウ 大津京  エ 万葉歌人
−線部の 「いたくなはねそ」 の意味として適当な表現を、本文中の、Aの歌を解釈した部分から抜き出して書きなさい。
Aの歌の作者が、「夫」をしのび、大切にしたいと思っているのは、どのような風景であると考えられるか。本文中のことばを用いて二十五字以内で書きなさい。
−線部の「人びとの暮らし」と深くかかわる琵琶湖の特徴について、B、Cの歌に共通して取り上げられていることは何か。歌を除く本文中から十字で抜き出して書きない。
A、B、Cの歌を取り上げることによって、筆者が、琵琶湖の風景について最も言いたかったことは何か。本文中のことばを用いて、四十字以内で書きなさい。